「英語の資格を取りたい」と思っている人の中には、自分の語学力を知りたい人もいれば、就職や留学のために、実力を証明する材料がほしい人もいるでしょう。
英語力を証明する資格が取れれば、高校や大学の入学試験で優遇されたり、貿易会社や外資系企業などで、海外と関わるさまざま仕事をすることもできますよね。
英語の資格には、国家資格や省庁に認定されたもの、民間資格などさまざまなものがあります。
どんな資格にチャレンジするか迷っている人は、この記事を読んで、目的にあった資格に挑戦してみてください!
国家資格と認定資格、民間資格の違いを知ろう
英語の資格にも、いくつか種類があることをご存知でしょうか。
みなさんもよく知っている「英検(実用英語技能検定)」は、日本で最も有名な英語の資格試験です。
英検は学校や会社で受けることができますが、国家資格ではありません。ただし文部科学省が認定している民間資格なので、公的な地位のある資格であるとは言えます。
日本で受けられる公的な地位のある英語試験には、英検のほか、外務省が後援する「国連英検」や、商工会議所の「日商ビジネス英語検定」などもあります。また、エンジニアや観光業など、特定の仕事に関連した英語力を証明する資格も存在しています。
ただし、日本国が主催している英語の国家資格は、「全国通訳案内士」ひとつのみです。
英語関係の唯一の国家資格、全国通訳案内士とは?
ここでは、全国通訳案内士とはなにか、また難易度・合格率について解説します。
全国通訳案内士は合格率10%程度の難資格として知られており、日本に対する幅広い知見と高い語学力が求められます。国際会議やイベント、観光地などで通訳案内業務を行うことができます。
日本を訪れた外国人に付き添い、有償で外国語の観光案内を行えるのはこの資格だけでしたが、近年になって自治体が認定する「地域通訳案内士」も登場し、独占資格ではなくなりました。
登録者数は、2万6,723人です(2022年4月1日時点)。
全国通訳案内士試験の難易度・合格率
全国通訳案内士は難資格だといわれていますが、10代で合格する人もいるので、決して勉強しても受からないような超難関ではありません。
以下は、外国語の科目で英語を選択した受験者数と合格率をまとめた表です。
年次 | 一次試験 | 二次試験 | 最終 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格者数 | 合格率 | 合格者数 | 合格率 | ||
2021 | 2,955 | 550 | 19.1 | 575 | 43.7 | 251 | 8.5 | |
2022 | 3,951 | 764 | 20.1 | 839 | 48.9 | 410 | 10.4 | |
2019 | 5,505 | 951 | 17.9 | 1,066 | 47.4 | 505 | 9.2 | |
2018 | 5,754 | 1,450 | 25.2 | 1,355 | 43.1 | 584 | 10.1 | |
2017 | 7,978 | 1,780 | 23.6 | 2,122 | 61.5 | 1,304 | 16.3 |
1次試験は20%前後、2次試験は40〜60%の合格率で推移していますね。
最終的な合格率を見ると、直近5年間の平均は10.9%と低い水準です。もちろん、医師や弁護士などと比べると劣りますが、国家試験の中では中程度の難易度とされています。
一次試験の科目は「外国語」、「日本地理」、「日本歴史」、「産業・経済・政治及び文化に関する一般常識」で、いずれも8〜7割が合格点です。
2次試験は、通訳案内の実務で必要なコミュニケーションスキルの判定となっており、7割の得点がとれれば合格です。
※外国語は、英語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・中国語・イタリア語・ポルトガル語・ロシア語・韓国語・タイ語のうち1つ
国が認定・後援している4つの英語資格を紹介!
英語を必要とする国家資格は全国通訳案内士のみですが、ほかにも省庁が認定・後援している英語試験があります。いずれも知名度が高く、信頼性もある資格検定として知られているので、目的と合うならぜひチャレンジしてみてください。
ここでは、国が認定・後援している英語資格を紹介します。
英検(実用英語技能検定)
英検は文部科学省公認の英語試験です。リーディング・ライティング・リスニング・スピーキングの4科目で構成され、総合的な英語力を判定します。
レベルは、1級〜5級の7段階で、5級は中学初級レベル、1級は英語資格でも屈指の難関として知られています。試験形式は、マークシート方式によるリーディング・リスニングが主で、3級以上になると、記述式と面接試験もあります。
受験や留学からビジネスまで、さまざまなシーンで英語の実力が証明できますが、国際的な試験では英検1級を超えるレベルの資格も存在します。
国連英検(国際連合公用語英語検定試験)
国連英検は、外務省の公認を受けている試験です。公的機関での信頼度が高く、警察官の採用試験や大学の推薦入試などで採用されているほか、国連や国際機関で働きたい人、外交官を目指している人も受験します。
試験は、特A〜E級までの6段階です。リスニングとリーディングを基本とし、B級では作文、A級では作文と面接試験が追加されます。国際政治・人権・環境・経済などの時事的な知識も必要です。
特A級は、国内英語資格の最高峰と言われており、合格するには、国際社会で即戦力として活躍できる高い英語力が必要です。
技術英語技能検定(技術英検)
文部科学省が後援している試験で、科学技術文書を「正確に」英語で読み書きする能力を問われます。仕様書や技術文書ではあいまいな表現が許されないため、受験する際には語句の意味や定義をしっかり理解することが大切です。
受験級はプロフェッショナルレベルから3級までの4種類で、3級は工業高校・高専低学年レベルの工業英語知識、プロフェッショナルレベルになると工業英語の専門家としての実務能力が求められます。
観光英語検定
こちらも文部科学省が後援しており、観光分野に特化した英語力をはかる試験です。問題の形式や問われる単語が、観光分野に応用特化しているため、高い英語力があったとしても対策が必要です。
1〜3級の3段階で、筆記とリスニングの試験があります。3級では初歩的な英語が問われますが、1級では、観光・旅行業のあらゆる場面や状況に対応できる実務力が問われます。
観光業界に就職したい人や、業界でキャリアアップを希望している人はぜひ受けておきたい試験ですね。
目的別にまとめた英語資格を大公開!
17の資格とその目的を紹介
ここでは、英語の資格試験を目的別にまとめました。チャレンジする資格を調べる時の参考にしてください。
資格 | 目的 |
---|---|
全国通訳案内士試験 | 通訳案内ができる観光ガイド資格(国家) |
英検(実用技能英語検定) | 進学・就職・留学・ビジネスなど全般 |
国連英検 | 国際機関や公的機関で働ける英語力 |
技術技能英語検定 | 科学・技術文書を読みこなす英語力 |
観光英語検定 | 観光業界で必要とされる英語 |
TOEIC | 進学・就職・留学・ビジネスなど全般 |
日商ビジネス英語 | ビジネス英語 |
TOEFL(トーフル) | 英語圏の大学・大学院留学 |
IELTS(アイエルツ) | 英語圏の大学・大学院留学 |
ケンブリッジ英検 | 英語圏の大学・大学院留学、移住など |
Linguaskill Business | ビジネス英語(総合力) |
GCAS | ビジネス英語(実践力) |
TEP TEST | ビジネス英語(英文コミュニケーション) |
CASEC | 日常生活、ビジネス |
ビジネス通訳検定(TOBIS) | ビジネス分野の通訳能力 |
JTA公認 翻訳専門職資格試験 | 出版・ビジネス文書翻訳 |
ほんやく検定 | 産業翻訳 |
入試から留学準備、ビジネスまで、幅広く役立つ英語資格
TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)
TOEICは、ビジネス全般の英語力をはかる試験です。世界で約700万人が毎年受験しており、日本と韓国が全体の約3分の2を占めています。外資系をはじめとする多くの企業が採用基準にしている試験であり、スコアは海外留学から大学入試まで幅広く活用されています。
TOEICのスコアを履歴書に書くには、最低600点以上が必要だといわれています。試験は2つのセクションに分かれており、前半はリスニング(聞く力)、後半はリーディング(読む力)で英語力を測定します。
試験は年10回あり、受験料も比較的安価なため、多くの人が挑戦する試験です。
日商ビジネス英語検定
日商ビジネス英語は、日本商工会議所などが実施する、ビジネス英語に重点を置いた試験です。契約書・企画書・メールなどを英語で作成する能力や、海外取引に関する知識が問われます。
商工会議所によると、2023年からは会話コミュニケーションを前提とした、スピーキングとリスニングの問題が導入されます。また、級別での合否判定からスコア方式に変更するとしており、受験方式はIBT(自宅のコンピュータから受験できる)も導入します。
貿易関係や外資系企業などに就職・転職する際に提出できる資格であり、受験料も6,600円と安価です。
北米や欧州の留学準備におすすめの資格試験
TOEFL (TOEFL iBT)
TOEFLは、「学生が英語で学ぶ力」を測定するテストで、非英語圏の学生が欧米に留学するための英語力を判定します。北米(アメリカやカナダなど)のほとんどの大学では、留学生の出願資格にTOEFLのスコアを求めています。
インターネットで配信される問題を、全セクション、コンピュータ上で解答するテスト形式です。リスニング・リーディング・スピーキング・ライティングの4科目で構成され、難易度は高め、120点満点です。大学の授業について行けるか判定するため、環境学や政治学、法律学などアカデミックな内容が出題されます。
海外留学には最低でも61点以上が必要と言われており、海外有名大学では100点以上が基準です。
IELTS(アイエルツ)
IELTSは、留学や海外移住のための英語力を判定する試験です。イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・カナダの大学では、TOEFL以外にIELTSも出願資格として認めています。これらの国に移住をする場合にも必要となる資格です。
IELTSはリスニング・リーディング・スピーキング・ライティングの4科目で構成され、試験結果は1.0〜9.0のバンドスコアで示されます。リーディングとライティングは、留学を目的とする受験者はアカデミックモジュール、移住目的の受験者はジェネラルモジュールを選択します。
TOEFLと同様に、アカデミックな英語力が求められます。留学の場合は、一般的に6.0〜6.5が入学基準と言われています。ジェネラルモジュールは、アカデミックモジュールと比べて、難易度はやや低めです。
ケンブリッジ英検
ケンブリッジ英検は、ヨーロッパを中心に世界中の機関によって認定されており、権威のある資格です。CEFRの評価に基づいて、スピーキング・ライティング・リーディング・リスニング能力を判定します。
試験は5つのレベルがあり、KET(基礎)・PET(初級)・FCE(中級)・CAE(上級)・CPE(最上級)です。多くの英語圏の大学では、留学生に対してCAE・CPEを入学基準としています。就職でアピールするには、FCE以上が必要です。
日本での知名度はまだ低いですが、国際的な資格のため、世界で通用する英語力の証明につながります。
ビジネス英語の実力がわかる資格試験
Linguaskill Business(旧:BULATS)
Linguaskill Businessは、グローバルビジネスで求められる英語力を測定する試験です。ケンブリッジ大学英語検定機構が開発し、公益財団法人 日本英語検定協会が販売・運用しており、世界50カ国以上の企業や機関で活用されています。
試験は、リーディングとリスニング、スピーキング、ライティングの3種類です。リーディングとリスニングは、正答か誤答かで次の出題が難しくなったり優しくなったりするので、より多くの段階で英語スキルを測ることができます。
スコアは、CEFRに基づいて評価されます。CEFRは、外国語の運用能力を評価する世界的な基準で、正確性が評価されています。
GCAS(ジーキャス)
GCASは、対面型のスピーキングテストです。ビジネスにおける実践的なシチュエーションを想定した出題で、実践的な英語力が問われます。
試験は、インタビュー、プレゼンテーション、ロールプレイで構成され、ネイティブスピーカーの面接官と1対1で行います。分析したデータを英語で説明したり、相手の反論に英語で対応したりするなど、滞りなくビジネスを進める英語力があるかが問われます。
スコアはLinguaskill Businessと同様、CEFRに基づいて算出されます。
TEP TEST®(テクニカルライティング英語検定試験)
TEP TEST®は、アメリカのミシガン大学と、日本テクニカルコミュニケーション協会(JATEC)が問題の作成や採点、運営方法などを管理している試験です。
問題はすべて記述式で、選択式の問題はありません。実務分野に特化し、英文レターやファックス・E-mailなどの通信文、論文、仕様書、提案書や契約書の運用能力を測定します。
1〜4級まであり、1・2級は試験場に辞書を持ち込めます。受験対象者はTOEIC400点程度は必要としており、基礎的な英語力がある状態での受験が推奨されます。
英語力を知りたい人に適した資格試験
CASEC
CASECは、JIEM(株式会社教育測定研究所)が開発・運営を行う試験です。日常生活・学校生活・ビジネスなど、生活全般で必要な英語力を測ります。
テストはリーディングとリスニングで、受験者の回答の正解・不正解に応じて次の問題の難易度が変化するシステム(アブダクティブ)を採用しています。24時間いつでもオンラインで受験でき、受験は40〜50分。費用もTOEIC等と比べて安価に設定されているので、気軽に受けられる試験と言えるでしょう。
テスト終了後、その場ですぐに結果のスコアが表示されます。中学レベル〜ビジネス上級レベルまでを対象としており、マイページから過去4年間のスコア履歴が見られます。
翻訳・通訳スキルが証明できる資格試験
ビジネス通訳検定(TOBIS)
ビジネス通訳検定は、ビジネス分野で活躍する通訳者のための資格です。企業・団体内で使われる、英語の通訳スキルを判定します。本人の英語力と適正な業務のマッチングが可能になります。
試験は、ヘッドフォンから流れる音声を聞き、マイクを使って日→英・英→日での通訳音声を録音します。日英混合の会話の通訳と、日英短文の翻訳、長めのスピーチの逐次通訳が出題されます。
1〜4級まであり、1級は同時通訳での試験を行います。
合格者には、オープンバッジという世界的な規格に沿って発行されるデジタル証明書が発行されます。
JTA公認 翻訳専門職資格試験
翻訳専門職資格は、一般社団法人日本翻訳協会(JTA)が実施する試験です。インターネットによる在宅試験で、翻訳者の能力を総合的に審査します。
①翻訳文法技能試験②翻訳IT技能試験③翻訳マネジメント技能試験に続き、④出版能力検定試験(絵本、ヤングアダルト、エンタメ小説、スピリチュアル、一般教養ビジネス、一般教養サイエンス)またはビジネス翻訳能力検定試験(IR/金融、法律、医学/薬学、特許)から1分野を選択
4科目のテスト全てに合格し、翻訳実務経験2年の実績審査を通過すると、「JTA 公認翻訳専門職(Certified Professional Translator)」に認定されます。
ほんやく検定
ほんやく検定は、日本翻訳連盟(JTF)の主催する、産業翻訳のレベルを判定するオンライン試験です。
1〜3級では、「政治・社会」「科学技術」「金融・証券」「医学・薬学」「情報処理」から1分野を選択し、英日・日英両方の翻訳を実務レベルで行います。4、5級は実務経験が少ない人や、翻訳を勉強中の人を対象としており、基礎力や翻訳センスを判定します。
2級以上の合格者には、JTF(日本翻訳連盟)加盟の翻訳会社から実際の仕事を獲得できたり、トライアルを免除するなどの特典が受けられます。
TOEICスコアアップにおすすめの英語スクール
上ではさまざまな資格試験を紹介してきました。なかでも就職活動や留学準備、ビジネスとさまざまなフィールドでマルチに活用できる資格はTOEICと言えます。
この章では、TOEICの対策ができるスクールを3つご紹介します。
トライズ
専属コンサルタントのサポートのもとで、約1,000時間の英語学習を行う英語コーチングスクールです。
「TOEIC®対策プログラム」では、英語力テストで現状を分析。2ヶ月の短期間でTOEIC対策に特化した学習を集中的に行なって、大幅スコアUPを目指します。
プログリット
「正しい学び方」を教えてもらえるコーチングスクールです。「TOEIC L&Rコース」では、目標点数に最短時間で到達できるように、効率的な英語学習法を指導してくれます。
プロが専属で学習プランをたててくれ、フォローもしっかりしているので、不安がありません。
QQ English
英会話スクールです。TOEIC対策講座が充実しており、「TOEIC®L&R TEST目指せ!ハイスコアラー」「TOEIC®S&W TESTスピーキング」「TOEIC®L&R TESTボキャブラリービルダー」の3つのコースから選んで受講できます。講師の質も高く、日本人スタッフのサポートも充実しています。
留学準備におすすめの英語スクール
留学準備におすすめなのは、TOEFLとIELTSです。一般的に大学・大学院への留学で求められるのは、TOFLEで最低61点以上、IELTSで最低6.0〜6.5と言われています。
ここでは、TOEFLとIELTSの対策ができるスクールを3つご紹介します。
mytutor
mytutorはオンライン英会話スクールです。講師の多くはTOEFL・IELTS、TOEIC、英検®など検定試験指導者です。ミニテストなどのパーソナルサポートも充実しており、1日の受講時間に制限がないため、集中的に短期間でのスコアアップが期待できます。
ベストティーチャー
ベストティーチャーはオンライン英会話スクールです。TOEFLコースでは、TOEFL iBTに特化した講師陣からライティングと英文対策、スピーキングを24時間・レッスン回数無制限で受けられます。
試験対策のプロ講師が監修したオリジナルレッスンのほかに、留学後の日常生活に必要なシチュエーションを含めたレッスンも受講できます。。
Universal Speaking
オンライン英会話スクールです。TOEFL、IELTS、ケンブリッジ英検コースのほかに留学準備コースもあります。ハイスコアを獲得できるように、1つ1つ試験対策を学習していきます。
日本人スタッフによる無料カウンセリングでは、より希望に合わせてレッスン内容をカスタマイズすることも可能です。
まとめ:目的に合った検定を受けよう
英語の資格試験には、国家資格・省庁の認定を受けた資格のほかに有名な民間資格があります。
やみくもに試験を受けるよりも、「なんのために資格を取るのか」を明確にし、的を絞って勉強しましょう。「英語力を活かしたい」という動機であれば、翻訳関連の資格か、就職・進学に有利になる、名の知れた資格を取得してもよいでしょう。
一方、外資系に就職したいのであればLinguaskill Business、留学準備のためであればTOEFLやケンブリッジ英検など、特定の分野で特に高く評価される検定もあります。
目的に合った資格検定にチャレンジして、ぜひ仕事や勉強でステップアップしてくださいね!